Surface Laptop Ultra の128GBは64GBより281,600円高い。1GBあたりの単価は16GB刻みの約1.33倍で、帯域の公表値は確認できず

ノートPCに使われるメモリチップのクローズアップ。メモリ容量と帯域を扱う記事のイメージ
目次

この記事のポイント

  • 価格:個人向けは税込513,480円(18コア・24GB/512GB)から1,094,280円(20コア・128GB/1TB)まで7構成
  • SoC(CPU・GPU・メモリ制御などを1つにまとめたチップ):NVIDIA RTX Spark。18コアCPU・5,120コアGPUと、20コアCPU・6,144コアGPUの2階層で、メモリは最大128GB
  • 差額:同じ32GB/1TBで比べると20コア化の対価は70,400円。64GBから128GBへは281,600円で、1GBあたり4,400円と、16GB刻みの3,300円より約1.33倍割高(いずれも公表価格からの計算)
  • 帯域:メモリ帯域は、確認できた範囲では NVIDIA が公表していない。報道ベースは約300GB/sで、並んで出る600GB/sは別の数字
  • OS:Arm版Windows。x86アプリはエミュレーション頼みで、購入前に手持ちのアプリで確認したい

Microsoft の「Surface Laptop Ultra」が、個人向けは10月16日に国内で発売されたと報じられています。7構成の価格差は大きく、しかも「128GB」「600GB/s」「最大1ペタフロップ」といった数字が並ぶため、どこまで払えば何が得られるのかが見えにくくなっています。

この記事では、公表価格から対価を分解し、メモリ帯域をめぐる数字の混同を整理します。読むと、自分に必要な構成の目安が分かります。

CPUとGPUとメモリを1枚にまとめた RTX Spark、20コア版を選べるのは32GB以上の構成から

Surface Laptop Ultra の中核は、NVIDIA の Windows PC 向け SoC「RTX Spark」(開発名 N1X)です。Arm 系の CPU と Blackwell(NVIDIA の GPU 世代名)世代の GPU を1つのパッケージに統合したもので、Microsoft は RTX Spark を Windows PC の新しいプラットフォームとして紹介しています(Microsoft の紹介記事)。

メモリは LPDDR5X(スマートフォンやノート PC で使われる省電力型の高速メモリ)で、最大128GBです。CPU と GPU が同じメモリを分け合う「ユニファイドメモリ」方式のため、GPU 専用メモリとは別に容量を用意する必要がありません。

18コア・5,120コアGPU と 20コア・6,144コアGPU、分かれ目はメモリ32GB

SoC には2つの階層があります。下位は18コアCPU・5,120コアGPU、上位は20コアCPU・6,144コアGPUです。価格表から読めるのは、18コア階層で選べるのは24GBと32GB、20コア階層は32GB以上、という点です。

32GB だけが両方の階層にあり、「メモリを増やす」と「SoC を上位にする」は一部で同時に起きます。なお、コア数以外に差があるかは確認できていません。

「最大1ペタフロップ」は NVFP4 のピーク値で、汎用的な処理の速さを表す数字ではない

資料に出てくる「最大1ペタフロップ」(1秒間に1,000兆回の演算)は、NVFP4(4ビットの浮動小数点形式)で演算したときのピーク値です。ベンダーの公称値であり、汎用的な処理の速さを表す数字ではありません。グラフィックス性能は「RTX 5070 ノート GPU 相当」と NVIDIA が説明したと報じられていますが、独立した実測検証は確認できていません。

同じ32GB/1TBで比べると、20コア化の対価は70,400円。64GBから128GBへは別に281,600円

国内の個人向け価格(税込)は、ITmedia PC USER、テクノエッジ、Gizmodo Japanなどが同じ値を伝えています。法人・教育機関向けは526,680円からです。

価格表(7構成)と、同じ32GB/1TBから取り出せる70,400円

SoCメモリ / SSD価格(税込)
18コア・5,120コアGPU24GB / 512GB513,480円
18コア・5,120コアGPU24GB / 1TB583,880円
18コア・5,120コアGPU32GB / 1TB636,680円
20コア・6,144コアGPU32GB / 1TB707,080円
20コア・6,144コアGPU48GB / 1TB759,880円
20コア・6,144コアGPU64GB / 1TB812,680円
20コア・6,144コアGPU128GB / 1TB1,094,280円

32GB/1TB が両方の階層にあるため、SoC を上位にするだけの対価が取り出せます。公表価格から差額を取ると、707,080円と636,680円の差で70,400円です。最小構成から最上位までは、同じく計算で580,800円の差になります。

64GBから128GBへの281,600円は、1GBあたり4,400円。16GB刻みの3,300円の約1.33倍

メモリの刻みを公表価格から計算すると、20コア階層は32GBから48GB、48GBから64GBのどちらも52,800円(+16GB)で、1GBあたり3,300円と一定です。ところが64GBから128GBだけは281,600円(+64GB)で、1GBあたり4,400円になり、約1.33倍の割高です。これらはすべて、公表価格からの本誌の計算です。

比べる物差しは他にもあります。18コア階層の24GBから32GB(+8GB)は52,800円で、1GBあたり6,600円です。また、SSD を512GBから1TBにする差は70,400円(18コア・24GB固定)で、SoC を上位にする対価と同額です。

表の上では、64GBと128GBは同じ20コア・1TBなので差はメモリ容量だけに見えます。ただし、価格表で「Windows 11 Pro」と明記されているのは最上位の128GB構成だけで、他の構成の Windows エディションは確認できていません。

そのため、281,600円にエディション差が含まれるかどうかも確認できていません。

容量を倍にする対価は、SoC を上位にする対価の4倍です。この金額を払う意味は、次の帯域の話を踏まえて判断する必要があります。

「128GBならローカルLLMが速い」とは限らない。約300GB/sと600GB/sは別の数字

結論から言うと、メモリ帯域(1秒間にメモリから読み書きできるデータ量)は、本誌が確認できた範囲では NVIDIA は公表していません。

NVIDIA 側の一次情報は「最大128GBのユニファイドメモリ」と述べるにとどまる、と Zenn の解説は指摘しています(Zenn の解説)。構成ごとに帯域が違うかどうかも分かっていません。

約300GB/sは報道ベースの推定、600GB/sは CPU-GPU 間の別の数字

報道ベースでは、256bit 接続の LPDDR5X が最大9,400Mbps で動く前提から、約300GB/sとされています(AKIBA PC Hotline)。これは公式値ではなく報道ベースの数字です。

一方、ITmedia などの解説記事に出てくる600GB/sは、メモリ帯域ではなく、CPU と GPU の間をつなぐインターコネクト(部品間の通信路)である NVLink C2C の値だとされています。NVLink C2C は、CPU のダイ(半導体チップの本体)と GPU のダイを直結するものです。

ただし、この値自体が媒体によって割れており、600GB/sとする記事と、双方向300GB/sとする記事があります。どちらが正しいかは決められません。

数字何の値か位置づけ
メモリ帯域LPDDR5X とチップの間本誌の確認範囲では非公表
約300GB/s同上(256bit・9,400Mbps から)報道ベース
600GB/sCPU-GPU 間の NVLink C2C媒体により双方向300GB/sとも

容量は「載るか」、帯域は「速いか」を決める。約300GB/sなら70GBのモデルで毎秒約4.3トークンが上限

大規模言語モデル(LLM)をローカルで動かすとき、メモリ容量はモデルが載るかどうかを決め、帯域は文章を生成する速さに大きく響きます。128GBは「大きなモデルが載る」ことを意味しますが、「速く動く」ことまでは保証しません。

概算の考え方は、モデルのサイズ(GB)を帯域(GB/s)で割ると、1秒あたり何回全体を読めるかが出る、というものです。全体を毎回使う通常の構造のモデル(密なモデル)は、トークン(モデルが出力する文字のかたまりの単位)を1つ作るたびに全重みを読むので、この値が毎秒のトークン数の理論上限になります。

報道ベースの約300GB/sで計算すると、70GBのモデルで毎秒約4.3トークン、40GBのモデルで毎秒約7.5トークンです。

これはあくまで上限で、MoE(専門家混合:一部の専門家だけを使うモデル)や量子化(重みの精度を下げてサイズを減らす手法)で実効は変わります。帯域自体が公表値ではないため、この概算も目安にとどまります。

同じ計算を273GB/sで行った既刊として、GMKtec EVO-X5 Pro の帯域を計算した記事があります。

Arm版Windowsなので、x86アプリは Prism エミュレーション頼みになる

Surface Laptop Ultra の OS は、Arm 版 Windows です。x86 向けに作られたアプリは、Windows に組み込まれた変換機構「Prism」(x86 の命令を Arm で動く命令にその場で置き換える仕組み)を通して動きます。

ハンズオンが伝えたのは、x86ゲームのエミュレーションでは性能低下が避けられないこと

Gizmodo Japan のハンズオンは、RTX Spark 搭載機で複数のゲームがネイティブまたはエミュレーションで動いたとしています。同時に、x86 向けゲームを Arm でエミュレーションすると、ある程度の性能低下は避けられないと述べています。

低下幅の具体的な数値や、アプリ全般の互換率は、本誌では確認できていません。

英語版の Microsoft 公式ページは Copilot+ PC と説明していますが、日本ではその点があまり強調されていないという指摘があります(窓の杜)。そのため、Copilot+ PC の機能がどこまで使えるかは、購入前に確認したい点です。

購入前に自分のアプリで確かめたいこと

確かめたいのは次の3点です。

  • 業務で使うアプリが Arm ネイティブか、エミュレーションで問題なく動くか
  • ゲームや周辺機器のドライバーを使う場合は、そちらも Arm 対応か
  • 動いたとしても、自分の作業で許容できる速度か

ここは、ベンチマークの数字より自分のアプリでの確認が確実です。

AI 用途で買う場合は、ローカル LLM の実行環境(Ollama・LM Studio・llama.cpp など)、PyTorch などの機械学習フレームワーク、CUDA を使うツールが Arm 版 Windows でどう動くかを調べてください。これらの対応状況は、本誌では確認できていません。使うツールの配布ページで、Arm 版 Windows への対応を確かめる必要があります。

128GB同士なら ASUS ProArt P14 より103,720円安い——ただし税込かどうかまでは確認できていない

同じ RTX Spark を載せた他社機として、ASUS JAPAN が10月14日に ProArt P16(H7607)と P14(H7407)の予約受付を始めました(PC Watch)。

128GB・48GB の各モデルを並べた比較表

機種48GB128GB発売時期
Surface Laptop Ultra(20コア)759,880円1,094,280円個人向けは10月16日発売と報道
ASUS ProArt P14949,800円1,198,000円128GBは10月23日から順次、48GBは11月中旬から順次
ASUS ProArt P16999,800円1,248,000円同上

ASUS 側の価格が税込か、SoC が20コア階層かは確認できておらず、Surface と条件がそろっているかは確認できていません。

128GB同士で、公表価格から計算すると、Surface は ProArt P14 より103,720円、ProArt P16 より153,720円安くなります。条件がそろっていない可能性があるため、この差額は目安として読んでください。

Dell・HP・Lenovo・MSI の国内価格と日程は、比較に入れていない

Dell・HP・Lenovo・MSI も RTX Spark 搭載機を予定していますが、国内の価格と日程は未確認のため、比較に入れていません。

MacBook Pro との価格・性能の比較は行わない

Surface Laptop Ultra は、M5 Max 搭載 MacBook Pro の対抗機として報じられた機種ですが、その位置づけは媒体の見立てで、Microsoft が名指しで比較した公式主張は確認できていません。

MacBook Pro との価格・性能の比較は、本誌では行いません。

32GB/1TBで足りる人、64GB以上を考える人、128GBが必要な人

ここまでの分解から、構成を選ぶ目安をまとめます。以下の「載るモデルの大きさ」は、メモリが OS や他のアプリにも使われること、会話の文脈を保持する領域(KV キャッシュ)が実行中に増えることを踏まえた、本誌の目安です。出典のある事実ではありません。

32GB/1TB(636,680円 / 707,080円)は、ローカルLLMで大きなモデルを動かさない人の出発点

18コア版が636,680円、20コア版が707,080円で、差は70,400円です。SSD を512GBから1TBにする差と同額でもあるため、どちらにお金をかけるかをこの額で比べられます。

本誌の目安では、40GB級のモデルファイルは載せにくい容量です。大きめのモデルを動かす予定がなければ、ここから考えられます。

64GBまでは1GBあたり3,300円の刻み。64GB(812,680円)なら40GB級までが目安

20コア階層では、32GBから48GB、48GBから64GBのどちらも52,800円で、64GBまでは1GBあたり3,300円と単価が一定です。

本誌の目安では、64GB機で扱えるモデルファイルは40GB前後までです。本文の換算では、この大きさのモデルの上限は毎秒約7.5トークンです。

128GB(1,094,280円)は、70GB級のモデルが必要な人だけが選ぶ構成

64GBから128GBへは281,600円で、単価は4,400円に上がります。本誌の目安では、128GB機なら70GB級のモデルまで扱えます。

281,600円を払って得るのは「より大きなモデルが載ること」です。機体が遅くなるわけではありません。モデルが大きいほど1トークンあたりに読む量が増えるため、上限は40GB級の毎秒約7.5トークンから、70GB級では約4.3トークンへ下がります(いずれも約300GB/sを前提にした上限)。

選ぶ前に、次の2点を確認してください。

  1. 使いたいモデルのファイルサイズが、64GB機の目安(40GB前後)を超えるか
  2. そのサイズを約300GB/s(報道ベース、公表値ではない)で割った上限速度が、自分の許容に届くか

現況は購入前に Microsoft ストアで確認してください。

まとめ

Surface Laptop Ultra の価格差は、同じ32GB/1TBで比べると20コア化が70,400円、64GBから128GBへが281,600円と、公表価格から分解できます(本誌計算)。1GBあたりでは、16GB刻みの3,300円に対して、64GBから128GBは4,400円です。

メモリ帯域は、本誌が確認できた範囲では NVIDIA が公表しておらず、報道ベースは約300GB/sです。600GB/sはメモリ帯域ではなく、CPU-GPU 間の NVLink C2C の値とされますが、600GB/sか双方向300GB/sかは媒体で割れています。帯域が公表されていない以上、128GB化が速さにつながるかは本誌では確認できません。

次の一手として、まず自分が使うアプリの Arm 対応を確認し、そのうえで32GB/1TB を基準に、64GB以上が必要な理由を言葉にしてから構成を選んでください。

ASUS ProArt の128GB機は10月23日から順次発売です。同じ RTX Spark を積んだ他社機のレビューからは、公表されていない帯域や実性能の手がかりが得られるかもしれません。128GB を検討するなら、それを見てからでも遅くありません。

編集後記

64GBから128GBへの281,600円が、1GBあたり4,400円と16GB刻みの3,300円より割高になる点が、いちばん印象に残りました。容量の数字ばかり追っていて、帯域の公表値をまだ確認できていないことを一瞬忘れかけたのは、私の反省点です。

— CODE. 編集部

Photo: OMAR SABRA on Unsplash

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