防災メールと同じドメインから、カード会社を名乗るメールが届いた。アルカディア不正アクセスで送信元は手がかりにならない

スマートフォンの画面に緊急の通知が表示されているイメージ
目次

この記事のポイント

  • いつ:10月11日にアルカディアが不審な挙動を確認し、10月13日に公表。緊急停止していたサーバは10月15日15時ごろに復旧した
  • 何が:防災・防犯メール配信「SpeeCAN RAIDEN」で、メールアドレス約313万6,000件・電話番号約10万5,000件・FAX番号約1万5,000件に漏えいの可能性。いずれも項目別の最大値の推定で、確定件数ではない
  • 誰に:同じシステムを使う自治体の防災メール登録者。10月14日の追加発表で、消防職員・団員向け「119RAIDEN」と聴覚・言語障害者向け「NET119」の登録者にも広がった
  • なぜ重要:1社の侵害で多数の自治体と消防が同時に当事者になった。静岡市では防災メールと同じドメインのアドレスからカード会社を名乗るメールが届いたと報じられており、送信元だけでは判断できない
  • 読者は何をすべきか:カード会社名のメールはリンクと添付を開かず、カード裏面の窓口から自分で確認する。配信の再開状況は自治体ごとに違うため、再開を待つ間も再開後も、公式サイトや自治体の公式SNSアカウント、防災行政無線など別経路で防災情報を受け取れるようにする

313万件の出どころは1社のシステム——名前の違う防災メールが、同じ SpeeCAN RAIDEN で動いていた

アルカディア(大阪府箕面市)の「SpeeCAN RAIDEN(スピーキャン・ライデン)」は、自治体の防災・防犯情報メール配信に広く使われているサービスです。住民から見える名前は自治体ごとに違い、さいたま市では「防災行政無線メール」、静岡市では「市防災メール」と呼ばれていますが、裏では同じ基盤が動いていました。

今回止まったのは、企業の会員サービスではなく、防災・消防・119番通報という公共インフラの連絡手段です。共通システムが入口になる構図は、委託先のFAQシステム「i-ask」が入口になった大和証券の事案にもありましたが、1社の侵害が自治体と消防の連絡手段に同時に及んだ点が本件の新しさです。

ITmedia などの報道によると、漏えいの可能性があるのはメールアドレス約313万6,000件、電話番号約10万5,000件、FAX番号約1万5,000件です(ITmedia)。この3つは項目別で、足しても人数にはなりません。アルカディアは、決済情報はこのサービスでは扱っていないと説明していると報じられています。

防災メールと同じドメインから、カード会社を名乗るメールが届いた——静岡市の事例

静岡市では、市の防災メールと同じドメインのアドレスから、実在のカード会社を名乗り利用状況を尋ねるメールが、住民と市職員に届いたと報じられています(中日新聞)。金銭被害は確認されていないとされます。

「送信元ドメインを確かめる」は定番の自衛策ですが、正規の配信基盤と同じドメインから届くため、この事案では安全の証拠になりません。同じドメインから届いた理由、つまり攻撃者が配信基盤そのものを使ったのか、ドメインを偽装しただけなのかは、公表が見当たりません。

ドメインが当てにならないなら、見るべきは2点です。メールが何を求めているか(カード番号・認証情報・金銭)と、リンクを踏まずに自分の側から正規の窓口へ行くことです。

不審メールの確認状況は自治体で異なります。さいたま市では、送信元にシステム名の文字列が入ったメールについて、市民から問い合わせがありました。これが発覚の端緒です。横須賀市と彦根市でも、静岡市と同じくカード会社を装う不審メールを確認したと、共同通信が報じています(東京新聞)。宮崎県は、今回調べた範囲で不審メールの記述が見当たらず、有無は未確認です。

同じシステムでも自治体ごとに中身が違う——横須賀市は4サービス計で延べ5万8,920人分、静岡市は職員の氏名・職員番号・所属も

以下の件数も漏えいの可能性がある最大値で、一部は報道ベースです。単位は各自治体の公表どおりで、「延べ」は重複を除いていない数です。サービスをまたぐ合算は人数になりません。項目が公表されていない行は「項目は公表なし」と書いています。

自治体対象サービス件数・項目備考
さいたま市防災行政無線メール/災害時防災情報電話サービス34,783件(メールアドレス)/73件(氏名・電話番号等)2サービスの合算は人数ではない(市公表)
横須賀市4サービス合計(うち防災情報メール/防災情報FAX)4サービス合計で延べ5万8,920人分(氏名・メールアドレス・電話番号など)。うち防災情報メール47,065件(メールアドレス)、防災情報FAX 996人(事業者名・電話・FAX・メール等)10月13日公表。残り2サービスの内訳は確認できていない
静岡市市防災メール/市職員34,336人分(項目は公表なし)/職員6,915人分(メールアドレス・氏名・職員番号・所属)市の公表は計4万3,000人余りと報じられており、上記2件以外の内訳は確認できていない。10月15日に、漏えいの可能性がある情報が700件以上追加されたと報じられた
宮崎県防災・防犯情報メールサービス38,959件(項目は公表なし)委託先を経由してアルカディアのシステムを利用。不審メールの有無は未確認
香川県防災情報メール約25,566件(項目は公表なし。10月5日時点の登録数)県公表ページで10月13日に公表
上越市安全メール延べ24,797件(項目は公表なし)報道ベース

影響を受けた自治体の数も定まっていません。ITmedia は約700、FNN は約800、MBS は111、集計サイトは125以上と伝え、共同通信は「36自治体がサービスを停止」と報じています。数え方が割れているため、確定数としては扱いません。

消防にも波及した119RAIDENとNET119——通報手段の登録情報が、氏名・生年月日・住所まで

10月14日の追加発表で、消防向けの別サービスにも影響が広がりました。

「119RAIDEN」は、消防職員・団員への一斉連絡に使うシステムです。メールアドレスは報道では約9万7,000件とされますが、出所は確認できていません。日本経済新聞は約11万4,000件と伝えており、数値に差があります(日経)。

「NET119」は、聴覚・言語に障害のある人が、スマートフォンなどから文字で119番通報できるサービスです。約1万3,000件で、項目は氏名・生年月日・性別・住所・電話番号・メールアドレスなどと報じられています(サイバーセキュリティ.com)。通報手段の登録情報であり、利用者が聴覚や言語に障害のある人だと推測できてしまう情報を含みます。映像を使った通報については、その後、漏えいの可能性なしと訂正されたと報じられています。

NET119の登録者にとって、いま通報できる状態かどうかは、本記事では確認していません。消防本部によって状況が異なる可能性があります。登録している本人や家族は、利用する消防本部の案内を確認してください。

この2サービスの件数は313万件に足せません。別のサービスで集計の単位も異なり、重複の有無も分からないためです。対象範囲は同日中に複数回更新され、一部は訂正されています。

サーバは15時ごろ復旧——侵入経路、持ち出しの有無、実人数、同じドメインから届いた理由は未公表

10月15日15時ごろ、緊急停止していたサーバは復旧しました。アルカディアは、侵入経路の遮断と不正プログラムが無いことの確認を説明し、念のためログインパスワードの変更も呼びかけていると報じられています(アルカディア公式お知らせ)。

一方、次の点は公表が見当たりません。

  • 侵入経路の技術的な内訳と、侵入の開始日時
  • 実際に外部へ持ち出されたかどうか
  • 重複を除いた実人数と、対象自治体の確定リスト
  • 防災メールと同じドメインから不審メールが届いた理由

公式発表にパスワードが漏えいしたという記述は確認できていません。呼びかけられたログインパスワードは、管理者・契約者側のログイン用とみられます。

カード会社名のメールはリンクと添付を開かず、カード裏面の窓口へ——再開を待つ間も、再開後も防災情報は別経路で

アルカディア側のサーバ復旧と各自治体の配信再開は別の話で、再開の状況は自治体ごとに異なり、本記事では各自治体の再開状況までは確認していません。

カード会社を名乗るメールは、防災メールと同じ送信元に見えても、リンクと添付を開かないでください。確かめたいときは、カード裏面の窓口や公式サイトから自分で問い合わせます。防災メールの登録に使ったメールアドレスを他のサービスのIDにも使っている場合は、そのサービス側で不審なログイン通知が来ないかにも注意してください。

自分の自治体の発表は、次の手順で確認します。

  1. 自分が登録している防災メールの名称を確認する(防災メール、防災行政無線メール、安全メールなど、自治体ごとに違います)
  2. 自治体の公式サイトで、その名称に関するお知らせを探す。「自治体名+お知らせ」で検索すると手がかりになります

NET119や119RAIDENに関わる人は、消防本部・消防局の発表を見てください。影響の有無は本部によって異なる可能性があります。

再開を待つ間も、再開後も、公式サイト、自治体の公式SNSアカウント、防災行政無線など別の経路でも防災情報を受け取れるようにしておくと安心です。

まとめ

読者が取る行動は3つです。メールの送信元だけで判断せず、リンクと添付は開かないこと。自治体と消防本部の発表を見ること。そして、配信が再開するまでの間も再開後も、防災情報を別の経路でも受け取れるようにしておくことです。対象範囲は更新が続いているため、この記事は10月15日時点の整理です。

編集後記

私が一番引っかかったのは、静岡市で防災メールと同じドメインからカード会社を名乗るメールが届いたと報じられた点です。「送信元を確かめる」を当たり前の自衛策だと思っていたので、それが通じない場面があると知って、自分の習慣を少し疑ってしまいました。NET119の登録情報まで影響が及んだことも、約313万6,000件という数字以上に重く受け止めています。

— CODE. 編集部

Photo: Jamie Street on Unsplash

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