AIチャットを日常づかいするとき、「答えの中身」と同じくらい体験を左右するのが「返ってくる速さ」です。ICT総研が2026年7月に公表した実測比較を手がかりに、ChatGPT・Gemini・Claudeの応答速度を、自分の使い方に引き寄せて読み解いていきます。この記事を読むと、(1)3サービスの速度序列、(2)「速さ」と「安定」は別物だという視点、(3)自分の用途でどの数値を見て選べばよいか、の3点がわかります。
なぜ今、AIチャットの「応答速度」が話題になるのか
応答速度は、AIチャットの満足度を静かに左右します。答えの質が同じでも、待ち時間が積み重なれば使い勝手は変わるからです。
ICT総研は2026年7月21日、ChatGPT・Gemini・Claudeの3サービスについて応答速度の実測比較を公表しました(ITmedia Mobileが報道)。各社が性能を競ういま、「体感の速さ」を数字で示した比較は、サービス選びの新しい判断材料になります。
つまり応答速度は、これからのAIチャット選びで無視できない評価軸のひとつです。以下、その数字を具体的に見ていきます。
「TTFT」と「E2E」とは — 応答速度を測る2つのものさし
速さを語るには、2つのものさしを分けて考える必要があります。ひとつは「反応の速さ」、もうひとつは「待ち時間の総量」で、両者は別物だからです。
TTFT(Time To First Token)は、質問を送ってから最初の文字(トークン)が返り始めるまでの時間です。画面が動き出すまでの「反応の速さ」にあたり、体感のキビキビ感に直結します。E2E(End to End)は、回答が最後まで出そろうまでの時間で、待ち時間の総量を表します。
たとえば短い相づちを何度も交わす使い方ならTTFTが、長文をまとめて生成させる使い方ならE2Eが、体験を強く左右します。この2軸を頭に置くと、次の実測データが読み解きやすくなります。
3サービスの応答速度を実測データで比較する
まず全体像を数字で押さえます。ICT総研調べでは、TTFT・E2Eのいずれもサービスによってはっきりした差がありました。
| サービス(モデル表記) | TTFT 昼 | TTFT 深夜 | E2E 昼 | E2E 深夜 |
|---|---|---|---|---|
| ChatGPT(gpt-5-chat-latest) | 0.70秒 | 0.73秒 | 1.29秒 | 1.27秒 |
| Claude Sonnet 5 | 0.94秒 | 記載なし | 3.28秒 | 3.41秒 |
| Gemini(gemini-3.5-flash) | 1.79秒 | 2.05秒 | 記載なし | 記載なし |
(すべてICT総研調べの中央値。空欄は今回報じられた範囲に数値がなかった項目です。)
TTFT(初回の反応)の比較
ICT総研調べでは、TTFTはChatGPT(gpt-5-chat-latest)が昼帯0.70秒・深夜帯0.73秒で3サービス中最速でした。Claude Sonnet 5は昼帯0.94秒でChatGPTの約1.3倍、Gemini(gemini-3.5-flash)は昼帯1.79秒・深夜帯2.05秒と最も遅い結果です。反応が動き出すまでの速さでは、ChatGPTが一歩抜けています。
E2E(全文が出そろうまで)の比較
回答が最後まで出そろうE2Eでも、ICT総研調べではChatGPTが昼帯1.29秒・深夜帯1.27秒で最速を維持しました。一方Claude Sonnet 5は昼帯3.28秒・深夜帯3.41秒で、これは自身のTTFT(昼帯0.94秒)の約3倍にあたります。初動が速くても、全文が出そろうまでの待ち時間は別問題だとわかります。
「速い=良い」とは限らない — Geminiの安定性が示すもう一つの視点
速さの順位だけを見ると、Geminiは最も遅いサービスに映ります。しかし「安定性」という軸を加えると、評価は変わります。
ここで効くのが標準偏差(ばらつき)、つまり毎回の応答時間がどれだけブレるかの指標です。ICT総研調べでは、GeminiのTTFT標準偏差は昼帯・深夜帯とも0.20秒で、ChatGPTの半分以下でした。速さでは劣っても、待ち時間の「読みやすさ」ではGeminiが優れています。
この結果を自分の使い方にどう生かすか
大切なのは、順位ではなく「自分がどの数値を見るべきか」です。使い方によって効いてくるものさしが違うからです。
短い対話をテンポよく重ねたいなら、初動の速いTTFTが効くため、昼帯0.70秒で最速だったChatGPTが第一候補です。長文の生成をまとめて任せるならE2E(待ち時間の総量)を見ることになりますが、今回E2Eが報じられたのはChatGPTとClaude Sonnet 5の2社のみで、この2社なら昼帯1.29秒のChatGPTが待ち時間は短く済みます(GeminiのE2Eは今回の報道範囲になく、この用途では比較できません)。待ち時間が毎回ブレず読みやすいことを最優先するなら、TTFT標準偏差が昼夜とも0.20秒でChatGPTの半分以下だったGeminiが有力です。
このように、速度序列そのものより「自分の用途に合うものさしで選ぶ」ことが、後悔しないサービス選びにつながります。
まとめ — 応答速度の全体像と、数値を読むときの注意
ICT総研調べでは、TTFT(初回の反応)はChatGPT(gpt-5-chat-latest)が最速、Claude Sonnet 5が中位、Gemini(gemini-3.5-flash)が最も遅い一方でばらつきが最小、という序列でした。E2E(全文が出そろうまで)はChatGPTがClaude Sonnet 5より速く、GeminiのE2Eは今回の報道範囲に数値がないため比較できません。「速さ」と「安定」を分けて見ると、遅いサービスにも選ぶ理由があることがわかります。
ただし、これらはあくまでICT総研調べの中央値である点に注意が必要です。今回の報道では原発表URLを特定できておらず、測定の試行回数・対象プラン・測定条件も公表されていません。数字は「傾向をつかむ手がかり」として冷静に受け止め、最終的には自分の環境で試すのが確実です。
編集後記
速さの順位ばかり見ていた私には、最速はChatGPTでも、GeminiのTTFT標準偏差が0.20秒とChatGPTの半分以下に収まっている、という安定性が意外な発見でした。数字は速い遅いだけでなく、ばらつきの小ささという別のものさしでも読めるのだと、少し立ち止まりたくなりました。
— CODE. 編集部
Photo: Conny Schneider on Unsplash

