final のフラッグシップ密閉型ヘッドホン「DX10000 CL」に、特別仕様の「DX10000 CL Collector’s Edition」(以下 CE)が加わりました。CE は1,280,000円(税込)、通常モデルは1,180,000円(税込)で、差額はちょうど10万円です。
先に結論を書きます。final および各社報道によれば、この10万円で音は変わりません。変わるのは仕上げ・付属品、そして「いつ手に入るか」です。この記事では、両モデルの公表仕様と各社報道をもとに、その差の中身を分解していきます。
CEが7月24日に先行、通常モデルは秋まで持ち越し
このヘッドホンは、限定版が通常モデルより先に出るという珍しい順序をたどっています。CE の発売日は2026年7月24日(Stereo Sound ONLINE)、一方の通常モデル DX10000 CL は2026年秋の発売予定です(AV Watch)。
CE は初回限定生産で、世界150台とされています(final 公式、Hifi Pig)。予約受付は2026年7月9日に始まりました(川崎経済新聞)。
つまり読者から見た現在地はこうです。いま入手の窓が開いているのは150台の CE のみで、通常モデルを選ぶなら秋まで待つことになります。
なお、150台という上限に対して現時点(本稿執筆時)の在庫状況は各社報道からは確認できていません。世界150台のうち国内での割当数も、各社報道からは確認できていません。販路の詳細(final 公式ストア限定か、店頭での取り扱いがあるか)も本稿執筆時点では確認できていません。購入を検討する場合は final 公式ストアで最新の在庫を確認することを勧めます。
シリコン基板上でダイヤモンドを育てる — 新開発ドライバーユニット「DU」の正体
DX10000 CL の中核は、トゥルーダイヤモンド振動板を搭載する新開発のドライバーユニット「DU」(Driver Unit の略とみられる)です。final はこれを、フラッグシップイヤホン A10000 と同系の技術と位置づけています(PR TIMES)。
製法は CVD(化学気相成長=原料ガスから固体の膜を基板上に析出させる手法)を用います。シリコン基板の上にダイヤモンドを結晶成長させ、そのシリコンを溶解して取り除くことで、ダイヤモンドの箔を得る——というのが公表されている工程です(AV Watch)。
ダイヤモンドを「貼る」のでも「蒸着する」のでもなく、育てた膜だけを残す。名称の「トゥルー(真の)」は、この作り方の違いを指していると読めます。
「100Hz以下で従来比1/100以下」という公称値の読み方
final はこの振動板の効果として、従来のダイナミック型ドライバーと比較して100Hz以下の帯域で歪率が1/100以下になったと公表しています(PR TIMES)。低域は振幅が大きく歪みが出やすい帯域で、そこを名指しした数字です。
ただしこれはメーカー公称値です。比較対象の「従来」が具体的にどの製品を指すのか、測定条件がどうであるかは、公表情報からは特定できません。数値そのものより「低域の歪みを設計上の主戦場に据えた製品である」という設計思想の表明として受け取り、最終判断は試聴に預けるのが妥当です。なお、試聴の機会(試聴機の設置や貸出の有無)についても、各社報道からは確認できていません。
20Ω・92dB/mW・543gというスペックと、2本の付属ケーブル
ドライバーは40mmのダイナミック型。インピーダンス20Ω(1kHz)、感度92dB/mW、質量543g(コード除く)です(e☆イヤホン)。筐体にはアルミマグネシウム合金を用い、日本製とされています(final 公式)。
543g(コード除く)という質量は、携行より据え置きでの使用を前提にした設計であることを示しています。付属品の構成も、それを裏づけています。
4.4mmと4XLR、据え置き前提の2本立て
付属ケーブルは2本です。ePTFE(フッ素樹脂の一種。ケーブルの被覆材として使われる)銀コートケーブル(4.4mm・1.5m)と、銀コートケーブル(4XLR・3m)が同梱されます(final 公式)。4XLR は4極のXLR端子で、据え置きアンプのバランス出力に使われる規格です。
さらに変換アダプタが2種類(4XLR→6.3mm、4.4mm→6.3mm)付属します。バランス接続(左右チャンネルの信号を独立配線し、干渉を抑える接続方式)の4.4mmと4XLRに加え、シングルエンド(左右でアース線を共用する一般的な接続方式)の6.3mmにも降りられる構成です。
長さの違いがそのまま用途の違いです。1.5mは机上のヘッドホンアンプ、3mは離れた場所に置いた据え置き機を想定した長さで、この2本立てはリスニング環境をあらかじめ用意している読者向けの設計だと読めます。
差額10万円の中身 — ゴールド仕上げ・桐箱・丹後ちりめん・削り出しスタンド
では10万円で何が増えるのか。CE では筐体の一部がゴールドカラーになります(通常モデルはシルバー系。Stereo Sound ONLINE)。
同梱物も CE 固有です。桐箱に収納され、1931年創業の絹織物メーカーへ別注したとされる丹後ちりめんの信玄袋と、アルミ削り出しの専用展示スタンドが付属します。通常モデルは final D シリーズ共通の保護キャリングケースです(final 公式、Hifi Pig)。
「しまう」ための箱ではなく「置いて見せる」ためのスタンドが付く点に、CE の性格が出ています。
| 項目 | Collector’s Edition | 通常モデル(DX10000 CL) |
|---|---|---|
| 価格(税込) | 1,280,000円 | 1,180,000円 |
| 発売時期 | 2026年7月24日 | 2026年秋 予定 |
| 生産数 | 初回限定生産・世界150台 | 明示なし |
| 筐体カラー | 一部ゴールドカラー | シルバー系 |
| 収納・展示 | 桐箱+丹後ちりめんの信玄袋+アルミ削り出しスタンド | Dシリーズ共通の保護キャリングケース |
| 付属ケーブル | ePTFE銀コート(4.4mm・1.5m)/銀コート(4XLR・3m)+変換アダプタ2種 | 同一 |
| 音質・音響性能 | 同一 | 同一 |
表の内容は final 公式および各社報道の公表情報にもとづくものです。付属ケーブルを含む「同一」の記載も、両モデルの実機を突き合わせて確認した結果ではありません。
※参考: SoundGuys の報道によれば、海外では通常モデルが8,499ドル前後、CE が8,999ドル前後とされます(媒体により差あり)。為替・税制等の条件が異なるため国内価格と単純比較はできません。
音の差はゼロ、それでも10万円の差がある理由
表のいちばん下の行が、この記事でもっとも重要な事実です。final および各社報道によれば、CE と通常モデルは設計・ドライバーが共通で、異なるのは外装と同梱物のみとされています(Porta-Fi)。両モデルを実測で比較検証した結果ではなく、メーカー由来の設計共通性にもとづく情報である点は押さえておきたいところです。
では、音以外の何を物差しにすればよいのか。所有・展示・入手時期という3つの軸で整理してみます。
150台を取るか、秋まで待つか
第一に所有価値です。桐箱・丹後ちりめん・削り出しスタンドと150台という数字に、モノとしての価値を見いだすかどうか。
第二に入手時期です。いま鳴らし始めたいなら選択肢は CE 一択で、通常モデルの秋まで数か月待てるなら10万円は浮きます。
第三に、その10万円の使い道です。ケーブルやアンプなど音に効く方向へ回すという選択肢もあります。
まとめ
DX10000 CL Collector’s Edition の差額10万円は、音質ではなくゴールド仕上げ・桐箱・丹後ちりめんの信玄袋・展示スタンド、そして150台という初回限定生産の枠に対応しています。音を基準に選ぶなら、2026年秋発売予定の通常モデルを待つのが妥当な判断です。
一方で、トゥルーダイヤモンド振動板という新技術を最初期に手にする体験を重く見るなら、CE の150台がその唯一の窓です。通常モデルの正式な発売日や販路の詳細は秋に向けて明らかになる見込みで、続報を待ちたいところです。
【編集後記】
音質・音響性能は同一という結論のうえで残るのが、桐箱と丹後ちりめんの信玄袋、そしてアルミ削り出しのスタンドだという整理には、なるほどと思いました。差額10万円の中身が所有のかたちに寄っているとわかると、選ぶ基準は音以外の場所にあるのだと、記事をまとめながら私自身も考え直していました。
— CODE. 編集部
- Source:Stereo Sound ONLINE
- Source:AV Watch(1)
- Source:AV Watch(2)
- Source:final公式
- Source:Hifi Pig
- Source:川崎経済新聞
- Source:PR TIMES
- Source:e☆イヤホン
- Source:Porta-Fi
- Source:SoundGuys
Photo: Pelicular Studio on Unsplash

