この記事のポイント
- いつ:2026年7月31日に発表、8月3日にHugging Faceで重みが公開
- 何が:動画と音声を1モデルで出すMiniMax H3の「H3-Base」がオープンウェイト(学習済みの重みを配布する形態)で公開
- 誰に:手元のGPUで試したい個人・小規模制作、API利用を検討する事業者
- なぜ重要:2Kに上げる部品と前処理は今回非公開で、公式サポートのローカル生成は短辺768pまで
- 読者は何をすべきか:2Kが要件ならAPI前提の設計、日本はローカル実行が可能で検証にも投入できる
8月3日に公開されたのはH3-Base。2Kにする H3-Regenerate-2K と前処理の H3-Context-IR は今回非公開
公開されたのは一式ではなく、生成の中核「H3-Base」だけです。公式リポジトリは、前処理のH3-Context-IRと2K再生成のH3-Regenerate-2Kを今回のオープンウェイト化の対象から外しています(公式README)。ただしH3-Regenerate-2Kは「準備が整い次第公開予定」と明記されており、非公開が恒久的とは限りません。H3-Context-IRも今回は同梱されていませんが、独自に前処理を組むための手順(Prompting Guidance)は公式に示されています。現時点では、この2部品を使う2K生成はAPI経由が唯一の手段です。
公式が示すローカル生成の経路(SGLang・vLLM-omni向けの参照実装)では、短辺は768ピクセル固定です。READMEの「短辺は既定で768ピクセル」という記述に加え、これらの参照実装は768以外の値を指定するとエラーで拒否します。後述するコミュニティ報告のようにComfyUIなど別のツール経由ではこの制約が同じ形で効かない場合もありますが、公式が正式にサポートする経路で2Kを直接得る手段はありません。2Kが要る案件は、ローカル素材を最終的にAPIへ通す前提で工程を組むことになります。「数日中にオープンウェイトへ」という見通し(7月31日発表を報じたPC Watchの記事より)は、3日後の8月3日に現実になりました。
配布元はHugging Faceの MiniMaxAI/MiniMax-H3、コードとドキュメントはGitHubの MiniMax-AI/MiniMax-H3 で、公式READMEには短辺768を指定したローカル検証用のリクエスト例が同梱されています。
4〜15秒・24 FPS・32kHzステレオ音声つき。日本語を含む11言語の対話音声まで1モデルで出る
要点は、映像と音声を別モデルに分けないomni-modal(複数の入出力形式を単一モデルで扱う)構成です。出力は4〜15秒・24 FPS・32kHzステレオ音声つきで、対話音声は日本語を含む11言語が安定サポート対象とされています(公式README)。国内向けの短尺を、後段のTTS(音声合成)工程なしで試せます。
公開チェックポイントは2種類です。FL2VAは画像やテキストから動画を起こす版、Ref2VAは手持ちの参照素材(画像・動画・音声)を使って生成する版で、いずれも精度BF16・CFG蒸留(品質を保ちつつ推論回数を減らす最適化)済みです。Ref2VAの入力上限は画像9枚・動画3クリップ・音声3クリップ以下、合計12ファイルまでで、中核のH3-Omni-Transformerは33Bのdense構成、テキストエンコーダはQwen3-VL-32Bの重みをそのまま使っています。
公式はVRAM要件を示していない。デプロイ例はGPU4枚、RTX 3090単体の報告は15秒に23分17秒
確かな手がかりは、公式のsglangデプロイ例が --num-gpus 4 --ulysses-degree 4=GPU4枚を想定している点だけです(公式README)。公式のVRAM要件は公表されていません。以下は公式デプロイ例と、構成依存のコミュニティ報告です。
| 構成 | VRAM | 条件 |
|---|---|---|
| 公式デプロイ例(sglang) | 記載なし | GPU4枚想定 |
| RTX 3090単体+RAM 31GB(tonyd2wild/minimax-h3-localの報告) | ピーク約19.8GB | ComfyUI経由・15秒・832×480で23分17秒 |
| DiffSynth-Studio向けNF4量子化版 | 最低8GBと配布側が明記 | 品質は要検証 |
「RTX 3060で動く」の出どころは量子化+CPUオフロード前提の最適化パック
RTX 3060で動作するという主張は、量子化とCPUオフロード(モデルの一部をGPUの外へ逃がす手法)を前提としたComfyUI向け最適化パックでのもので、公式スペックではないとの指摘があります(Kingy AI)。Kimi K3のオープンウェイト公開時も、実用にはH200が12〜16基必要とみられていました。重みが手に入ることと手元で回ることは別問題です。
除外地域は米国・EU・英国・韓国。日本はローカル実行が認められている
ライセンスは独自の「MiniMax H3 Community License Agreement」(発効2026年8月2日)で、除外地域として米国・EU・英国・韓国が指定されています(Hugging Face)。日本は除外地域の対象外で、ローカル実行が認められています(Tech Times / Innovatopia)。
このライセンスが縛るのは、配布された重みをローカルで使う行為の一式です。除外地域では、重みの実行・改変・配布・ホスティングに加え、そこから生成した出力物の利用も許諾されないと報じられています(MLQ.ai)。API経由の利用はMiniMaxが提供する別のサービスで、この地域制限を受けずグローバルに提供が続くとされています(MLQ.ai)。
商用利用にも条件があります。年商2,000万米ドルを超える組織がH3を利用する場合、MiniMaxへの事前の書面による許諾が必要とされています。未満の組織はこの許諾なしで利用できるとの報道です(Tech Times)。自社の年商がこの線を超えるかどうかで、必要な手続きが変わります。
2K出力が要るならAPIで1秒$0.13。768pティアの単価は情報源によって食い違っている
2Kが必要ならAPI一択です。グローバル版APIの2K出力は1秒$0.13で(Atlas Cloud)、15秒なら約$1.95の計算です。
一方、768pティアは情報源によって数字も提供条件も食い違っており、本稿執筆時点では確定できません。クローズドベータで一般提供されていないとする報道もあります(Segmind)。見積もりには提供元への確認が先です。
| 経路 | 解像度 | 単価 |
|---|---|---|
| グローバル版API | 2K | $0.13/秒 |
| グローバル版API | 768p | 未確定(情報源により食い違う) |
| 中国本土プラットフォーム | 2K相当 | CNY 0.8/秒との報道(別体系) |
| ローカル実行 | 短辺768pまで | 自前のGPU次第(2K化は不可) |
動画編集Elo 1130で首位、一方 Text to Video では Gemini Omni Flash に届かない
評価は用途で割れます。Artificial AnalysisのVideo Editing(音声あり)でH3はElo 1130の1位となり、オープンウェイトのモデルが動画ランキング首位に立つのは初とされています(The Decoder)。ただしText to VideoではGemini Omni Flashに、Image to VideoではSeedance 2.0とGemini Omni Flashに及びません。既存素材の編集・再構成に強く、ゼロから映像を起こす用途では上位ではない、と読めます。
同じ7月31日、ByteDanceはSeedance 2.5を発表しています。評価の順位だけでなく、重みを公開するかどうかという姿勢でも両社の違いが表れました。
まとめ
MiniMax H3は見通しどおり3日でオープンウェイト化され、日本ではローカル実行が認められています。ただし手元で作れるのは短辺768pまでで、2K化と前処理の2部品は今回のところAPI側に残りました。
ハードウェア要件は公式に非公表で、判断材料はコミュニティの実測報告に限られます。価格は2Kが$0.13/秒、768pティアは情報源によって食い違い確定していません。まずは768pのローカル検証で実測を取り、2Kが要る工程だけAPIに寄せるのが、現時点で無駄の少ない進め方です。
編集後記
短辺768pまで、という線引きが思っていたよりくっきり引かれていた印象です。重みは出すけれど2Kにする部品はAPIに残す、という設計は正直だと思います。RTX 3090で15秒に23分17秒という報告の数字を見ると、私ならまずは短い尺から試しますね。
— CODE. 編集部

