GMKtec は、ミニPC「EVO-X5 Pro」を、ローカルで300B級のAIモデルを動かせる機種として打ち出しています。同社は9月5日に IFA 2026 で発表し、発売告知では表記を320B級に改めました。ただし、この数字の根拠となる対象モデル名・量子化方式・速度は、報道を見る限り公表されていません。本稿は速報時点で確認できた範囲の整理です。
この記事のポイント
- いつ:GMKtec は IFA 2026 で2026年9月5日に EVO-X5 Pro を発表し、9月28日に発売されたと報じられている。
- 何が:Ryzen AI Max+ PRO 495 と192GB統合メモリ(最大160GBを iGPU に割り当て可能)を載せたミニPCで、同社は「300B級」、のちに「320B級」のローカルAI実行をうたっている。
- 誰に:大きなモデルをローカルで試したい人と、約100万円の価格帯を検討している人。
- なぜ重要:同社・報道によれば帯域は最大273GB/s。重みが160GBを埋める密なモデルを毎トークン全部読み直す場合の理論上限は毎秒約1.7トークンで、MoE 型のモデルならこれより上がる(いずれも実測ではない)。
- 読者は何をすべきか:購入前に公式ストアの価格、モデル・量子化・tok/s の開示、帯域の一次仕様の3点を確認する。速度が要るなら、使う予定のモデルが密か MoE かを先に見る。
「300B級をローカルで」は同社の公称、発表時の300Bは発売告知で320Bに変わった
まず、動くと言っているのが誰かを押さえておきます。300B・320Bは、いずれも GMKtec 自身の公称です。IFA 発表時の公式ブログのタイトルは「Fully Local 300B-Parameter AI」でした。発売告知のブログでは「Offline 320B AI」に変わっています。当初は300Bを設計目標とし、最適化の結果320Bに到達したという趣旨の説明を同社がしたと報じられています。
製品の骨格は、複数の報道で一致しています。APU(CPUとGPUを1チップにまとめたもの)は AMD の Ryzen AI Max+ PRO 495 で、メモリは192GBの LPDDR5X-8533 です。TechPowerUp の報道では、このうち最大160GBを iGPU(内蔵GPU)用に動的に割り当てられるとされています(TechPowerUp、VideoCardz)。CPUとGPUが1つのメモリを共有する方式を、統合メモリと呼びます。
160GBを割り当て、4bit量子化なら300B超のモデルが動くという説明は、AMD の説明として Wccftech が報じています(Wccftech)。量子化とは、モデルの重みを少ないビット数で表して容量を減らす手法です。AMD の一次資料は見当たらず、独立した実測は確認できていません。
複数の報道は、GMKtec が tok/s(1秒に生成するトークン数。トークンは文字を分割した処理単位)・対象モデル名・量子化方式を公表していないと指摘しています。
160GBを割り当てられるのは「容量」の話、帯域273GB/sから出る理論上限は毎秒約1.7トークン
160GBという数字が示すのは、モデルを載せられるかという容量です。速く動くかは別の指標で決まります。大規模言語モデルは、文章を1トークン生成するたびに、モデルの重みをメモリから読み直します。そのため、1秒に読み出せるデータ量であるメモリ帯域幅が、生成速度の上限を左右しやすくなります。
本機の帯域は、同社や関連報道によれば最大273GB/s です。これは LPDDR5X-8533 を256bit幅で使った理論値と、算術が合います。8533(MT/s)×32バイト(256bit)≒273GB/s です。仕様集約サイトには256GB/s と書くものもあり、AMD 公式の記載は見当たりません。
ここから、公表されている数値だけで導ける上限を置きます。同社・報道の273GB/s を前提に、重みが160GBを埋めるモデルを1トークンごとに全部読み直す場合、273÷160≒1.7、つまり毎秒約1.7トークンが上限です。これは理論上限であって実測ではなく、実際の速度はこれを下回ります。KVキャッシュやOSの取り分があるため重みが160GBを丸ごと使うことも実際にはなく、あくまで単純化した目安です。
この算術がすべてのモデルに当てはまるわけではありません。上の式が当てはまるのは、毎トークン重みを全部読む密(dense)なモデルです。MoE(Mixture of Experts。トークンごとに一部の専門家だけを使う構造)のモデルは、毎回読むのが活性パラメータ、つまり実際に使われる一部の重みだけなので、上限はこれより上がります。「300B級」をうたうモデルには MoE 型も多く、300B級だから必ず遅いとまでは言えません。
自分で試算したい場合は、273を「毎回読む重みのGB数」で割れば上限が出ます。ただし MoE で毎回どれだけ読むかは、同社が対象モデルを公表していないため本機については分かりません。
もう一点、192GBに払う価値の見方です。帯域は搭載容量ではなくメモリの規格と幅で決まるため、容量が増えても1トークンあたりの読み出し速度は上がりません。192GBが効くのは、載せられるモデルの大きさです。なお同社の128GB機(EVO-X2 など)の帯域は、今回は確認できた数字がありません。
Mac Studio(2025年モデル)はM3 Ultraが819GB/s、M4 Maxが546GB/s、EVO-X5 Proの約2〜3倍
同じく統合メモリで大きなモデルを動かす機種として、Mac Studio の2025年モデルと並べます。Apple の公式 Tech Specs では、M3 Ultra が819GB/s、M4 Max(16コアCPU・40コアGPU)が546GB/s とされています。ここでは帯域だけを並べます。
| 機種 | メモリ帯域幅 | 数字の出どころ |
|---|---|---|
| GMKtec EVO-X5 Pro | 最大273GB/s | 同社・関連報道(LPDDR5X-8533×256bit の理論値と算術一致) |
| Mac Studio(M4 Max・16C CPU/40C GPU) | 546GB/s | Apple 公式 Tech Specs |
| Mac Studio(M3 Ultra) | 819GB/s | Apple 公式 Tech Specs |
出典:Apple サポート、Apple Mac Studio 仕様
273GB/s は同社・報道、819GB/s と546GB/s は Apple 公式の数字で、測定条件をそろえた比較ではありません。割ると273÷819≒0.33、273÷546=0.5です。
帯域の差がそのまま速度の差になるとは限りません。EVO-X5 Pro が実際に毎秒何トークンで動くのかは、独立した実測が出るまで書けません。
日本価格は報道で3通り、2TBが1,087,840円・1,055,840円・1,039,840円
3つの数字は、通常価格と段階的な早割の違いとみられますが、報道が割れていて断定できません。
| 2TB / 4TB | 呼ばれ方 | 出典の主体 | 税込の明記 |
|---|---|---|---|
| 1,087,840円 / 1,135,840円 | 価格として表記(見出しは「約108万円」) | PC Watch(記事)ほか | 確認できず |
| 1,055,840円 / 1,103,840円 | 「10月5日までの7日間限定早割価格」 | 24wireless.info ほか | 確認できず |
| 1,039,840円 / 1,071,840円 | 公式ストアの「スーパー早割価格」・24時間限定(9月29日16時まで、10台限定と報じられた) | gaming-st.com、24wireless.info | あり(税込) |
早割の期間も「24時間限定」「10月5日までの7日間」「言及なし」と報道で割れています。税込と明記されているのは、1,039,840円・1,071,840円の組のみです。
9月29日16時までとされた最安の早割は、本記事の時点で既に期限が過ぎています。最安値を前提にしないほうが無難です。公式ストアの表示価格は変動するため、購入時の画面で確かめてください。
販路は、発売時点では GMKtec の公式ストア(jp.gmktec.com)が中心とされています。Amazon・楽天で取り扱いがないとの報道もありますが、これは二次情報で、未確認です。
買う前に確かめる3点は、価格の表示・速度の開示・帯域の一次仕様
確認の優先順は次のとおりです。
- 公式ストアの価格と税込表記。 3通りのうち、いま適用されるものを購入画面で確かめます。
- 対象モデル・量子化方式・tok/s の開示。 同社の公表か、第三者の実測が出るまで、実用速度は判断できません。
- 帯域の一次仕様。 仕様集約サイトには256GB/s の記載もあります。AMD 公式の記載が出るかを見ます。
用途別の見方は次のように分かれます。
- 載るかどうかが主題の人:大きなモデルをローカルに置いて挙動を試したい場合、160GBの割り当てが意味を持ちます。
- 速度が要る人:まず、使う予定のモデルが密か MoE かを確認します。密なモデルなら上の算術上限(毎秒約1.7トークン)が効くため、実測の開示を待つ判断になります。MoE なら上限は上がりますが、どこまで上がるかは本機では公表がありません。
消費電力・騒音・冷却、保証やサポート、llama.cpp など各ソフトの対応状況、160GB割り当て時にOSへ残る容量は、いずれも公表・検証された情報が見当たりません。購入前に個別に確認が必要な項目です。
まとめ
EVO-X5 Pro の320B級は同社の公称で、速度の裏付けとなる公表はありません。同社・報道の273GB/s から導ける上限は、重みが160GBを埋める密なモデルなら毎秒約1.7トークン、MoE 型ならこれより上がります。どちらに当たるかは使うモデルで変わるため、実測の開示を待ってから判断するのが安全です。
編集後記
私は192GBという容量の数字に目を奪われていましたが、速さの手がかりになるのは同社・報道の帯域273GB/sのほうだという点が印象に残りました。300Bから320Bへ数字が上がっていく先に、どのモデルでどれだけ出るのかを知りたくなりました。
— CODE. 編集部
- Source:GMKtec(1)
- Source:GMKtec(2)
- Source:TechPowerUp
- Source:VideoCardz
- Source:Wccftech
- Source:PC Watch
- Source:Apple(1)
- Source:Apple(2)
Photo: Manuel Luikenga on Unsplash

