この記事のポイント
- いつ:米国時間2026年8月13日(日本時間8月14日)に公開。前モデル Gemini 3.6 Flash からわずか3週間での刷新
- 何が:Google の新モデル「Gemini 3.7 Flash」(モデルID
gemini-3.7-flash)。入力100万トークン・出力6万5,536トークンに対応し、コーディングとAIエージェント実行の強化を掲げる - 誰に:Gemini API を使う開発者、Gemini Enterprise Agent Platform を使う企業、Google AI Pro/Ultra 加入者(Gemini アプリの Spark)
- なぜ重要:入力$0.75/出力$3.75 は 3.6 Flash にも同時適用された期間限定価格です。2027年1月1日からは両モデルとも入力$1.50/出力$7.50 になります
- 読者は何をすべきか:安くなるのは検証にかかるコストであって、移行しても運用単価は下がりません。年内のうちにコーディング・エージェント実行を中心に検証しておくのが得策です
3.6 Flash を土台に差し替えた gemini-3.7-flash、入力1M・出力64kトークン
Gemini 3.7 Flash は、ゼロから学習し直した新系統ではなく、3.6 Flash を土台にした改良・置き換えという位置づけで公開されました。Google は、コーディングやエージェント機能においてこれまでで最も高性能なワークホースモデルと位置づけており、日常的に大量に回す作業用モデルの世代交代という性格が強い発表です(Google 公式ブログ)。
実装前に押さえておきたい仕様は次のとおりです。
- モデルID:
gemini-3.7-flash - コンテキスト長:入力 1,048,576トークン(1M)/最大出力 65,536トークン(64k)
- thinking level:low / medium / high の3段階(推論にかける計算量を選べる設定)
- 入力形式:テキスト・画像・動画・音声・PDF/出力形式:テキストのみ
Google が改善領域として挙げるのは、ソフトウェアエンジニアリング、知識作業、Web開発の3領域です(コーディングとAIエージェント実行は、このうちソフトウェアエンジニアリングの中核にあたります)。3週間前に登場したGemini 3.6 Flashが3モデル同時発表の一角だったのに対し、今回は Flash 単体の差し替えという形を取っています。
Googleの自社評価では AutomationBench が17.0%から30.4%へ伸びた
性能の伸びを見る前に前提を1つ。以下の数値はすべてGoogleの自社評価によるもので、第三者による独立検証ではありません。そのうえで見ると、前モデルからの改善幅は領域によってかなり偏りがあります。
| ベンチマーク | 測るもの | Gemini 3.7 Flash | Gemini 3.6 Flash |
|---|---|---|---|
| Terminal-bench 2.1 | ターミナル操作の遂行 | 85.8% | 78.0% |
| DeepSWE v1.1 | 実リポジトリの課題解決 | 65.3% | 49.0% |
| FrontierCode 1.1 Main | 難度の高いコーディング課題 | 43.6% | 34.4% |
| AutomationBench | 一連の自動化タスクの完遂率 | 30.4% | 17.0% |
| GDP.pdf | 複雑なPDF資料の読解 | 34.0% | 22.0% |
伸び幅が最も大きいのは AutomationBench(17.0%→30.4%)と DeepSWE v1.1(49.0%→65.3%)で、いずれもエージェントによる実行・自動化やソフトウェア開発タスク寄りの指標です。ターミナル操作を評価する Terminal-bench 2.1 も78.0%から85.8%へ上がっており、「手を動かす作業」の側に改善が集中していると読めます。
FrontierCode 1.1 Main で首位、ただし差は1ポイント前後
コーディング系の FrontierCode 1.1 Main では、Gemini 3.7 Flash が競合モデルを上回りました。
| モデル | FrontierCode 1.1 Main |
|---|---|
| Gemini 3.7 Flash | 43.6% |
| Claude Sonnet 5 | 42.7% |
| GPT-5.6 Terra | 41.3% |
差は1ポイント前後で、決定的な開きではありません。GDP.pdf でも Gemini 3.7 Flash が競合を上回ったとされていますが、いずれも同一ベンダーによる比較である点は割り引いて読む必要があります。
知識作業の GDPval-AA v2 は Elo 1525 で4番手にとどまる
一方で、知識作業の出来を Elo レーティング(対戦形式の相対評価で用いられる指標)で採点する GDPval-AA v2 では、Gemini 3.7 Flash は比較4モデル中の最下位でした。
| モデル | GDPval-AA v2(Elo) |
|---|---|
| Muse Spark 1.2 | 1628 |
| Claude Sonnet 5 | 1598 |
| GPT-5.6 Terra | 1578 |
| Gemini 3.7 Flash | 1525 |
首位の Muse Spark 1.2 とは100ポイント以上の開きがあります。ベンダー自身の評価でこの結果である以上、資料読解やレポート作成といった知識作業を丸ごと乗せ換える判断は、少なくともこの指標だけを根拠にはできません。
$0.75/$3.75 は3.6 Flash にも適用された年内限りの導入価格
公開された$0.75/$3.75という数字は期間限定の導入価格であり、恒久的な値下げではありません。そして同じ期間限定の価格は、前モデルの 3.6 Flash にも今回の発表と同時に適用されています。
| 入力(100万トークン) | 出力(100万トークン) | |
|---|---|---|
| Gemini 3.7 Flash(〜2026年12月31日) | $0.75 | $3.75 |
| Gemini 3.7 Flash(2027年1月1日〜) | $1.50 | $7.50 |
| Gemini 3.6 Flash(〜2026年12月31日) | $0.75 | $3.75 |
| Gemini 3.6 Flash(2027年1月1日〜) | $1.50 | $7.50 |
年内は 3.6 Flash と 3.7 Flash の単価が同じで、切り替え自体でコストが下がるわけではありません。2027年1月1日からは両モデルとも単価が2倍になる前提で、コスト試算を組んでください。
開発者は Gemini API と Antigravity で即日、個人は Gemini アプリの Spark から
提供は発表と同日から始まっており、利用経路は3層に分かれます。
- 開発者:Gemini API、Google AI Studio、Android Studio、Google Antigravity(Google の開発者向けエージェント型開発環境)で即日利用可能
- 企業:Gemini Enterprise Agent Platform 経由
- 個人:160か国以上で提供中の Gemini アプリ Spark(Google AI Pro / Ultra 加入者向け)でも、発表と同日から Gemini 3.7 Flash が使えるようになりました
個人向けの入口となる Spark は、日本の Google AI Pro 加入者にも順次拡大してきた機能です。API を触らない読者でも、契約済みのプランからそのまま新モデルに触れられる形になっています。
フラッグシップ不在のまま Flash 系だけが回るサイクルをどう受け止めるか
Flash 系が3週間で刷新される一方、上位モデルの動きは止まっています。この非対称さが、今回の発表をどう受け取るかを決めます。
6月予定だったフラッグシップは未提供、短サイクルで動くのは Flash 系のみ
フラッグシップの Gemini 3.5 Pro は当初2026年6月の提供が予定されていましたが、本稿執筆時点で未リリースです。結果として、Gemini の系列で実際に更新が続いているのは Flash 系だけという状態が続いています。
この構図は、上位モデル待ちで判断を止めるより、いま動いている Flash 系を前提に検証を進めるほうが現実的であることを意味します。ただし3週間で次が出る前提でもあるため、特定バージョンに深く依存した作り込みは避けたいところです。
当てどころを絞るならコーディングとエージェント実行
検証の当てどころは、Googleの自社評価で伸びが明確だったコーディングとエージェント実行です。Terminal-bench 2.1、DeepSWE v1.1、AutomationBench の3本で二桁近い改善が出ている領域なら、自社のタスクでも差が出る可能性は相対的に高いといえます。
逆に、知識作業(GDPval-AA v2 で4番手)の置き換えを検討するなら、自前の評価データで比べるまで結論を出さないほうが安全です。開発ツールの自動化を試すなら、権限やデプロイの扱いを含めた運用面もあわせて確認しておきたいところです。
なお、Google は 3.6 Flash の提供終了時期を明示していません(本稿執筆時点)。移行の期限が公表されていない以上、切り替えの要否は期日ではなく自社の検証結果で判断することになります。
まとめ
Gemini 3.7 Flash は、3.6 Flash を土台に3週間で差し替えられたワークホースモデルです。Googleの自社評価では Terminal-bench 2.1 が78.0%から85.8%、AutomationBench が17.0%から30.4%へと、エージェント実行・自動化系で大きく伸びました。一方で知識作業の GDPval-AA v2 は Elo 1525 の4番手で、得意領域ははっきり偏っています。
価格については、入力$0.75/出力$3.75 が2026年12月31日までの導入価格である点を押さえておきたいところです。この価格は 3.6 Flash にも同時に適用されているため、年内はどちらを使っても単価は変わりません。2027年1月1日からは両モデルとも入力$1.50/出力$7.50 になります。当てどころはコーディングとエージェント実行、時限は2026年12月31日、コスト試算は2027年以降の単価を前提に組むのが現実的です。
出典(本文中のリンク先URL)
- https://blog.google/intl/ja-jp/company-news/technology/gemini-37-flash/ (Google公式ブログ)
- https://andcontents.com/gemini-3-6-flash-launch-price-cut/ (自サイト内部リンク・前モデル記事)
- https://andcontents.com/gemini-spark-japan-pro-expansion/ (自サイト内部リンク・Spark日本展開記事)
編集後記
3.6 Flash からわずか3週間での刷新という速さより、私は導入価格の $0.75 が 3.6 Flash にも同時適用されていた点に目が留まりました。新モデルだけの数字だと思い込んで読み始めたので、途中で価格表を二度見してしまいました。2027年1月に両モデルとも倍になるまで、どちらを使うか静かに悩む時間が続きそうです。
— CODE. 編集部
Photo: Daniil Komov on Unsplash

